はじめて民族衣装を見たのは、早朝から開かれていた青空市場に足を踏み入れたときだ。立込める朝もやの空気が民族衣装の青紫色を飲み込み、その場一帯が民族衣装の色で染められたかのような独特の光景に強い衝撃を受けた。
583日の旅をして民族衣装文化が残る村を約80箇所訪問した。そこで感じたことは民族衣装は村ごとに違う特色があること、先住民は素朴な暮らしをしていることだった。
はじめは民族衣装姿に心を奪われたが、彼らと寝食を共にし織物を教わり生活を送ることで、厳しい自然のなかで家畜の世話や畑仕事、織物を作ることが日常の暮らしであり、衣食住が密接に繋がった生活をしているのだと知ることができた。太陽と共に活動を始め、日が沈むと寝静まる。自然に沿った暮らしのなかで民族衣装は存在していた。
村ごとのそれぞれの衣装に文化や気候などの土地柄を見ることができ、その土地が育んだ姿が現れていた。私はその生きる姿を投影した衣装姿に強く惹きつけられたのだと思う。
しかし最近では、交通の便が発達し出稼ぎに行く人が増えている。現金を必要とする生活に環境が変わり、都会に出るため洋服を着る人々が増えている。純粋に民族衣装を身に纏う人は減り、都市部での観光産業のための民族衣装を身に着ける人々が増えている。歴史を積み重ねてきた素朴な文化は今大きく変わり始めている。
私は伝統的な暮らしの豊かさや多様性に富んだ民族衣装の魅力と、移り変わる現代の姿を伝えていきたいと思う
森井 勇介